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サル(さる)
[ 日本大百科全書(小学館) ]
【猿】

monkey、ape

哺乳(ほにゅう)綱霊長目中ヒトを除いた部分non-human primatesに対する一般呼称。狭義には、類人猿、原猿類をも除き、オマキザル、オナガザル2上科に属する種を総称することもあるが、一般名であるから厳密な限定はない。英名のモンキーmonkeyは尾の長いサルをさし、尾がないか極端に短いものつまりtailless monkeyをエープapeとよぶ。

分類
原猿類と真猿類の2亜目に大別される。前者は、メガネザル、ロリス、キツネザルの3下目5科からなり、後者は、オマキザル、オナガザル、およびヒトニザルの3上科中ヒト科を除いた4科からなる。これらはさらに、55属、約180種に分けられる。

[ 執筆者:伊谷純一郎 ]
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ペンギン(ぺんぎん)
[ 日本大百科全書(小学館) ]
penguin

鳥綱ペンギン目ペンギン科に属する海鳥の総称。この科Spheniscidaeの仲間は、南半球だけに分布し、とくに南極および亜南極圏の海域に多く生息する。全長約40~112センチメートル。羽は短く密で、全身を覆い、翼はひれ状になり、尾と足は短い。ひれ状の翼を用いて潜水し、魚類や動物プランクトン、イカ類をとらえて食べる。頸(くび)から上を水から出して遊泳し、すばやく潜水して水中を高速で進むことができるが、ちょうどイルカのように水中から空中に飛び出し、空気を吸い込んで着水し、また勢いをつけて水から飛び出すことを繰り返して、移動することもある。潜水適応した鳥なので、地上では敏捷(びんしょう)ではないが、直立姿勢をとり、歩いたり跳ねたりして移動する。氷上では胸腹部をつけて、滑るようにはうこともある。

南極圏・亜南極圏のどの島をとってもペンギンが繁殖しない所はなく、南極半島と南極大陸の沿岸には、とくに多くのペンギンが繁殖している。また、オーストラリア南部やニュージーランド付属の島嶼(とうしょ)、アフリカ南部・南西海岸の島、南アメリカ南端のパタゴニア、ペルーやチリ沿岸にも繁殖する。分布の最北は赤道付近の熱帯ガラパゴス諸島である。

1. 分類
現生種は6属18種に分類される。最大種はエンペラーペンギンAptenodytes fosteriで、直立姿勢で1メートルの高さになる。南極の冬に、大陸の奥地に入って繁殖するただ一つの種で、海が氷結してまもなく集団営巣地に戻る。5、6月に1卵を産卵し、雄はこれを足の上にのせ、しばしば零下40℃以下に下がる暗黒の酷寒の中で、絶食して抱卵を続ける。雌は海で越冬するが、産卵から7、8週間後になると戻り、雄と抱卵を交替し、孵化(ふか)した雛(ひな)の世話をする。雛は春先はゆっくり成長し、以後急速に大きくなり、南極が真夏を迎えるころひとり立ちする。キングペンギンA. patagonicaは次に大きい種で、高さ約80センチメートルになる。亜南極圏の島で集団繁殖する。草の陰に営巣し、1卵を産む。卵を足の上にのせて抱卵し、冬季に雛を育てる。かつて人間によって多量に捕殺され、いくつかの島では姿を消した。しかし、その後保護され、再定着した島もある。

ニュージーランド南部とその周辺の冷海域の島にはキンメペンギンMegadyptes antipodesが繁殖する。周年この海域で生活し、9月なかばに、草のある海岸斜面にあがって2卵を産む。巣は物陰につくられ、草で産座が敷かれる。この種は、まばらで小さな集まりをつくって営巣し、密な大集団をつくることはない。

アデリーペンギン属Pygoscelisは、ジェンツーペンギンP. papua、アデリーペンギンP. adeliae、ヒゲペンギンP. antarcticaの3種からなる。南極圏・亜南極圏の島や大陸沿岸で繁殖し、甲殻類プランクトンや稚魚を食べる。このうちジェンツーペンギンがいちばん大形で、小石や草を用いて巣をつくり、春先に2卵を産む。秋になるまでに雛は独立する。ヒゲペンギンは南極半島とその近くのいくつかの島で繁殖し、2卵を産む。アデリーペンギンは亜南極圏を含む広い地域で繁殖し、エンペラーペンギンとともに南極大陸のもっとも奥まで繁殖分布する。とくに大きな集団をつくって営巣する。小石を集めて巣をつくり2卵を産み、体を横にして卵を抱く。この種はもっともよく研究され、繁殖生態のほか、誇示行動、コミュニケーションについても解析されている。

マカロニペンギン属Eudyptesは6種で、どれも目の上に金色あるいは濃い黄色の羽冠をもつ。亜南極圏の冷海域の島で繁殖し、冬季には北の暖かい海で過ごす。2卵を産み、初卵は第2卵よりも小さい。雛は1羽育つのみである。この仲間は雄のほうが体が大きく、とくに嘴(くちばし)は太い。マカロニペンギンE. chrysolophusは平地や荒れた斜面にきっちりまとまった大きな集団をつくって営巣し、石や草陰によく巣をつくる。研究者によってはマカロニペンギンと同一種として取り扱うロイヤルペンギンE. schlegeliは、オーストラリアのマックォーリー島でのみ繁殖する。イワトビペンギンE. crestatusは冷海の島で繁殖する。急峻(きゅうしゅん)な岩の斜面を跳びはねて登り降りし、巣と海とを往復する。岩や石、草の陰に巣をつくり、2卵を産む。このほかに3種あるが、すべてニュージーランド近海の島で繁殖し、似た生活をする。

ペンギン類でもっとも小形の2種はコビトペンギン属Eudyptulaに分類される。これらは全長40センチメートル余りで、ニュージーランドとオーストラリア南岸に分布する。周年温暖な海にすみ、夜、海岸にあがって、洞や土中に掘った巣穴に通う。1腹2卵、ときに3卵を産むことがある。魚類をとらえて食べる。

残る一つのグループはフンボルトペンギン属Spheniscusで、4種が含まれ、ペンギン類のなかでは北に分布し、温暖な海域で生活する。草や木の陰、土中の穴に巣をつくって、強い太陽光を避ける。どの種も嘴と足を使って穴を掘ることができる。普通、2羽の雛を育てる。これらもおもに魚類を食べる。マゼランペンギンS. magellanicusはチリ南部からパタゴニアにかけての海岸で繁殖する。営巣地は開けた海岸から、草地斜面、林とさまざまで、遮蔽(しゃへい)物がある所ではその陰に巣をつくり、そうでない所では浅い巣穴を自ら掘る。フンボルトペンギンS. humboldtiはチリ北部からペルーの海岸地方で繁殖し、洞や穴で小集団をつくって営巣する。フンボルト海流が養う豊富な魚群に依存して生活し、グアノの堆積(たいせき)に寄与してきた。しかし、かつてのグアノの乱掘によって営巣場所を奪われ、現在は数が少なくなっている。フンボルト海流の終点に位置するガラパゴス諸島にはガラパゴスペンギンS. mendiculusが生息する。海岸の洞穴で、単独または小さな集団をつくって営巣する。

もう1種は南アフリカ南部・南西部の沿岸で繁殖するケープペンギンS. demersusである。この種もベンゲラ海流が養われる。豊かな魚類を利用し、グアノ堆積に寄与した。裸地で岩の下に穴を掘ったり、まばらに生える植生の陰を利用して巣をつくり、2卵を産む。

2. 生態
ペンギン類の繁殖で興味深いのは、集団で繁殖する種の雛が、成長してから雛だけの密集した集合をつくることで、とくに、南極圏で繁殖するエンペラーペンギン、アデリーペンギンなどで大きな集合が形成される。これはオオトウゾクカモメやオオフルマカモメなどの捕食者から共同で身を守り、寒さやブリザードからお互いを守る意味をもつと考えられている。親鳥は、雛集団の周囲にきて鳴き声を発し、自分の雛を呼び出して給餌(きゅうじ)する。雛は全身の綿羽が本来の羽毛に生え換わるまで水には入らない。親鳥は繁殖のあと短期間に全身の換羽を行う。その間は陸にとどまり餌(えさ)をとることはない。このようにペンギンには、寒冷地で生活するためのさまざまな適応がみられる。

3. 人間生活との関係
ペンギン類はかつて人間の食料としてとらえられ、搾った油も利用された。卵も採集され、食料となった。こうした多量の捕殺によって、温暖な地方に生息するペンギンの数がとくに減少した。またグアノは良質の肥料として採掘され、そこに巣穴を掘って繁殖していたフンボルトペンギン、ケープペンギンは営巣場所を奪われ、減少した。近年ではどの国でも鳥類の捕獲を禁止・制限し、保護するようになった。しかし、別の新しい問題が生じている。海洋の油汚染は、多くの海鳥を一挙に殺してしまうことがある。ケープペンギンはこのために現在では数が著しく減ってしまった。もう一つは、漁業との摩擦で、海鳥が網にかかる事故だけでなく、海鳥の餌を人間がとってしまうということがあげられる。南極のオキアミを人間がとりすぎてしまえば、それに依存して生活するクジラ類やペンギン類などに限らず、ひいては生物群集そのものを変質させてしまうおそれがある。

[ 執筆者:長谷川博 ]

ウサギ(うさぎ)
[ 日本大百科全書(小学館) ]
【兎】

hare、rabbit

広義には哺乳(ほにゅう)綱ウサギ目に属する動物の総称で、狭義にはそのうちのウサギ科の総称であるが、一般には、さらにそのうちのノウサギ亜科に属する仲間をよぶことが多い。ウサギ類という総称でもよばれる。ウサギ目Lagomorphaは最近まで齧歯(げっし)目Rodentiaのなかの亜目とされていたが、齧歯類が4本の切歯(門歯)、すなわち、のみ歯があるのに対して、上あごの大きな1対の切歯の背方に小形に退化した1対の切歯が余分にあることを最大の特徴として区別され、現在では別の目とされている。ウサギ目にはナキウサギ科Ochotonidae(英名パイカ)とウサギ科Leporidaeがあり、ウサギ科にはムカシウサギ亜科Paleolaginaeとノウサギ亜科Leporinaeがある。

一般にウサギとよばれているノウサギ亜科にはノウサギやカイウサギが含まれる。イエウサギの名でもよばれるカイウサギrabbitはこの亜科に属するが、いわゆるノウサギhareと属を異にし、本来ヨーロッパ中部および南部、アフリカ北部にかけて生息していたアナウサギrabbit(ヨーロッパアナウサギOryctolagus cuniculus)を馴化(じゅんか)したもので、世界各地で改良、飼育されている。
[ 執筆者:澤崎 徹 ]

1. 野生のウサギ
ノウサギ類は、アナウサギ類に比べ前肢がやや長いため、座ったときの姿勢が斜めになる。穴を掘らずに地上に巣をつくり、そこに子を産む。生まれたばかりの子は、毛が生えそろっていて、目も見え、すぐに歩き回ることができる。ノウサギ類は、オーストラリア、ニュージーランドなどを除き、世界中ほとんどの地域でごく普通にみられる。たとえば、北極圏やアラスカにはホッキョクノウサギLepus arcticusやアラスカノウサギL. othusが、また、ヨーロッパに共通のノウサギとしてヨーロッパノウサギL. europaeusが分布するなど、多種が広く生息する。日本には、北海道にエゾユキウサギ(エゾノウサギ)L. timidus ainuがいるほか、ノウサギL. brachyurusの4亜種、すなわち、本州の日本海側と東北地方にトウホクノウサギ(エチゴウサギ)L. b. angustidensが、福島県の太平洋沿岸地方より南の本州、四国、九州地方にキュウシュウノウサギL. b. brachyurusが、さらに隠岐(おき)島と佐渡島に、それぞれオキノウサギL. b. okiensisとサドノウサギL. b. lyoniがあり、合計5種が生息する。エゾユキウサギと他の4種とは異なるノウサギ亜属に属し、エゾユキウサギは、ヨーロッパ、シベリア、モンゴル、中国東北部、樺太(からふと)(サハリン)など亜寒帯から寒帯にかけて広くすんでいるユキウサギの亜種である。ユキウサギは本種、亜種とも冬になると被毛が純白になる。一方、別の亜属に分類されるトウホクノウサギ、サドノウサギも冬毛は純白になるが、白くならないキュウシュウノウサギ、オキノウサギと同一グループとされる。世界でこれと同じ亜属に属するウサギは、中国東北部の東部とウスリー地方の狭い地域に分布するマンシュウノウサギL. mandchuricusだけである。

アナウサギ類は、ノウサギ類に比べ前肢が短いため、座ったときの姿勢が低く、体が地面と平行になる。さらにアナウサギの名のとおり、地中に穴を掘って巣をつくり、群れをなして生活する。この地下街は、「ウサギの町」と称されるほど大規模な巣穴となる。妊娠した雌は分娩(ぶんべん)用の巣をここにつくり、生まれた子は、目が開いていず、赤裸であることもノウサギと異なっている。

ローマ人たちは、壁に囲われた庭に、とらえたヨーロッパアナウサギを飼育していた。アナウサギはノウサギと異なり、このような人為的な環境下でも子を産み育てるから、数は増え、食肉用として飼育された。中世になると、帆船によって広く世界の各地に運ばれていった。これは、航海中の食糧を求める手段として、各航路の島々にヨーロッパアナウサギをカイウサギとして土着させるためであった。一般的環境、つまり気候や、餌(えさ)となる植生が適し、さらに害敵(肉食獣など)がいない土地では急速にその数を増していった。オーストラリア大陸には元来アナウサギ類は生息していなかったが、1859年にビクトリア州に導入されると、たちまちその数を増やし、90年ごろには、この地域におけるアナウサギの数は2000万頭と推定されるようになった。アナウサギの餌は草や若木の樹皮、畑の農作物であるから、被害は膨大なものになり、手に負えぬやっかい者になった。害を防ぐため、さまざまな手段が実施されたが、効果はなかった。1950年ごろからウサギの粘液腫(しゅ)ウイルス(全身皮下に腫瘤(しゅりゅう)を形成し、死亡率が高く、伝染力も強い)を用いた駆除法が成功し、近年はその被害も少なくなってきている。

日本には、奄美(あまみ)大島、徳之島特産のアマミノクロウサギPentalagus furnessiがおり、特別天然記念物に指定されている。穴を掘って巣をつくるところはアナウサギ類に似るが、耳の長さは半分以下で、体全体もずんぐりしている。アマミノクロウサギは「生きている化石」とよばれる動物の一種で、近縁としてメキシコ市近くの山にいるメキシコウサギRomerolagus diazziとアフリカ南部にいるアカウサギ属のプロノウサギPronolagus crassicaudatusなどとともにムカシウサギ亜科Palaeolaginaeに分類されている。
[ 執筆者:澤崎 徹 ]

2. 家畜としてのカイウサギ
カイウサギは、ヨーロッパアナウサギを馴養することに始まった。その後、大きさ、毛色、毛の長さ、毛の手触りなど、多様な変異を利用し、選抜淘汰(とうた)を繰り返して、多くの品種を作出してきた。用途によって、毛用種、肉用種、毛皮用種、肉・毛皮兼用種、愛玩(あいがん)用種に分けられる。

毛用種としてはアンゴラAngoraがよく知られている。トルコのアンゴラ地方が原産といわれ、イギリスやフランスで改良されたものが現在飼養されている。体重は、前者が2.7キログラム、後者が3.6キログラムである。全身が長い毛で覆われており、年に3~5回の剪毛(せんもう)で約500グラムの産毛量がある。白色毛がもっとも商品価値が高く、高級な織物や毛糸に加工される。

肉用種としてはベルジアンノウサギBelgian hareや、フレミッシュジャイアントFlemish giantなどがある。前者はベルギー原産で体重3.6キログラム、ノウサギに似た毛色をしているのでこの名がある。後者は「フランダースの巨体種」の名のとおりフランス原産で、体重は6.7キログラムにもなる。毛色は鉄灰色、淡褐色などさまざまである。

毛皮用種としてはチンチラChinchillaやレッキスRexなどがある。両者ともフランス原産。前者は、体重3キログラムほどの小形種、4.5~4.9キログラムの中形種、6.1~6.5キログラムの大形種がある。毛色は、南アメリカ産の毛皮獣である齧歯類のチンチラに似て黒と白の霜降り状で、息を吹きかけると黒と白の輪状の紋が現れる。後者は体重3.5~4キログラムで、毛はきわめて短く直立しているので、ビロードのような感触があるため、高級毛皮の代用品として珍重される。毛色には白色、黒色など多種があるが、カスターレッキスのものはカワウソの毛皮に似る。

兼用種は肉・毛皮両方を目的につくられた。兼用種にはニュージーランドホワイトNew Zealand whiteや日本白色種がある。前者はアメリカでつくられた白色種で、体重4.5~5キログラムで前躯(ぜんく)がよく発達し、肩幅と腰幅の差が少なく角形の体形を示す。後者は日本でもっとも多く飼育されている白色種である。起源は明らかではないが、おそらく明治初期に輸入された外来種との交配によってつくられたアルビノと考えられている。そのため以前は地方によって体形、大きさに差があり、大形をメリケン、中形をイタリアン、小形を南京(ナンキン)とよんでいたが、第二次世界大戦後統一され、体重は生後8か月で4.8キログラムを標準とする。肉と毛皮との兼用種として改良されてきたため、毛皮の質と大きさの点で優秀な品種である。

愛玩用種としてはヒマラヤンHimalayanやダッチDutchがある。前者はヒマラヤ地方原産といわれており、体重1.3キログラムの小形で、白色毛に、顔面、耳、四肢端が黒色の毛色である。後者はオランダ原産で、黒色、青色、チョコレート色などの被毛であり、胸の周りには帯をかけたような白色毛がある。体重は2キログラム前後である。
[ 執筆者:澤崎 徹 ]

3. 飼養
飼育箱は、幅、奥行が60センチメートル、高さが最低40センチメートルぐらいのものを使用し、ここに1頭ずつ飼育する。木製や金属製を用いるが、ウサギは大門歯が持続的に成長し、物をよくかじるから、木製の場合は頑丈につくる。床面は、ウサギを健康かつ清潔に飼育するために簀子(すのこ)にして、排出物が下に落ちるようにつくる。いずれにせよ、清掃が容易で清潔さを保てる点から、金属製の飼育箱が優れている。飼育法としてほかには、放し飼い、群れ飼いなどもある。

餌(えさ)は青草、乾草、野菜、穀類を与える。水は自由に飲めるようにする。とくに乾草給与時や、夏季、分娩後や哺乳中には水分が不足しやすい。ウサギは体に比べて大きな胃と盲腸があって大食である。成長期には1日に体重の1~3割の餌を食べる。ウサギの奇妙な習性に食糞(しょくふん)がある。普通にみられる糞と、ねばねばした膜に包まれた糞を交互に排出するが、後者が排出されると、自分の口を肛門(こうもん)に近づけて吸い込み、かまずに飲み込む。この糞を食べさせないようにすると、しだいに貧血症状を呈し、やがて死亡する。これからもわかるように、排出物というよりも餌といえるほどにタンパク質やビタミンB12が多く含まれていて、ウサギの健康維持にたいへん役だっている。

ウサギをつかむときには、背中の真ん中よりやや前方の皮を大づかみにする。両耳を持ってつり下げるようなことをしてはいけない。粗暴に扱ったり、苦痛を与えると、普段鳴かないウサギも、キイキイと甲高い声を出す。おそらく恐怖のための悲鳴であろう。
[ 執筆者:澤崎 徹 ]

4. 繁殖
ウサギは生後8か月から繁殖に用いられる。野生のウサギには繁殖季節があるが、カイウサギには認められない。また、自然排卵をしないで交尾刺激によって排卵が誘発される。この型の排卵はネコやイタチ類にみられる。妊娠期間は31~32日で、1回の分娩に6、7頭の子を産む。母親は分娩後、非常に神経質になり、興奮して子を食い殺すこともあるので安静にしておく。ウサギの乳汁は牛乳より栄養に富み、12.3%のタンパク質、13.1%の脂肪を含むから、赤裸の子も早く育つことができ、6~7週齢で離乳する。

ウサギは暑さに対して弱いばかりでなく、病気に対する抵抗力が一般的に弱い。とくにかかりやすい病気として、原虫によるコクシジウム症、細菌による伝染性鼻炎、ぬれた草(とくにマメ科植物)の多食による鼓張症などがある。
[ 執筆者:澤崎 徹 ]

5. 利用
日本において家畜としてウサギが飼養されるようになったのは明治時代からで、中国やアメリカなどから輸入され、当初は愛玩用として飼われていた。防寒具としての毛皮、食用としての肉が軍需用物資として使用されるようになって急激に飼育数が増大した。これはアメリカへの毛皮輸出を含めた1918年(大正7)の農林省の養兎(ようと)の奨励による。飼育数増大とともに各地で毛皮・肉兼用種への改良が行われ、現在日本白色種とよばれるものができた。日本におけるウサギの飼育頭数は、軍の盛衰と運命をともにし、一時は600万頭も飼育されていたが、第二次世界大戦の終戦とともに激減した。なお、日本ではウサギ類を古来「1羽、2羽…」とも数えるが、これは獣肉食を忌み、鳥に擬したためである。

毛皮は軽く保温力に富むのでオーバー、襟巻などに、アンゴラの毛はセーターや織物になる。肉もよく利用されるが、ほとんどは輸入されたものである。利用面で近年忘れられないことは、医学、生物学、農学などの研究に供試されることで、年間数十万頭が利用されている。
[ 執筆者:澤崎 徹 ]

6. 食用
ウサギの肉は食用としてもよく用いられる。野ウサギの肉はやや固く一種の臭みがあるが、家ウサギの肉は柔らかく、味も淡白である。ウサギ肉のタンパク質は、粘着性や保水性がよいので、プレスハムやソーセージのような肉加工品のつなぎとしてよく使われた。ウサギの肉は、鶏肉に似ているので、鶏肉に準じて各種料理に広く用いることができる。ただ、においにややくせがあるので、香辛料はいくらか強めに使うほうがよい。栄養的には、ウサギの肉はタンパク質が20%と多く、反対に脂質は6%程度で他の肉より少ない傾向がある。
[ 執筆者:河野友美・大滝 緑 ]

7. 民俗
『古事記』にある「因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)」の説話や、『鳥獣戯画』に描かれているおどけたウサギなど、古来ウサギは人間と密接な関係をもつ小動物と受け取られてきた。「かちかち山」や「兎と亀(かめ)」などの動物説話が広く知られている一方、一見おとなしそうなウサギが逆に相手をだます主人公となるような類話も少なくない。その舞台を語るのか、赤兎山(あかうさぎやま)、兎平(うさぎだいら)、兎跳(うさぎっぱね)など、ウサギにちなむ地名が全国各地に分布する。また時期や天候の予知にも関係し、山ひだの雪形が三匹ウサギになると、苗代に籾種(もみだね)を播(ま)くとする所や、時化(しけ)の前兆となる白波をウサギ波とよんでいる所が日本海沿岸に広くみられる。ウサギの害に悩む山村の人々は、シバツツミとよばれる杉葉を田畑の周囲に巡らしたり、ガッタリ(水受けと杵(きね)とが相互に上がったり落ちたりする仕掛けの米搗(こめつ)き臼(うす))の発する音をウサギ除(よ)けとした。雪国の猟師たちは、新雪上に描かれたテンカクシ、ミチキリなどと特称される四肢の跡を目安に狩りをしたが、なかでも、棒切れあるいはワラダ、シブタなどといわれる猟具をウサギの潜む穴の上へ投げ飛ばし、空を切る音と影の威嚇(いかく)効果によって生け捕りにする猟法は、注目に値する。また、ウサギは月夜の晩に逃げるとか、その肉を妊婦が食べると兎唇(としん)(口唇裂)の子が生まれる、などの俗信も少なくない。

ヨーロッパ、とりわけフランスでは、家畜ウサギは食用としてニワトリと並び賞味されているが、一方の野生のノウサギは、世界各地で民話の登場人物として親しまれてきた。そのイメージの多くは、すばしこくて少々悪賢く、いたずら好きだが、ときには人にだまされるという共通性をもっている。アフリカ(とくにサバンナの草原地帯)の民話では、ウサギはトリックスターとして活躍し、ハイエナなどがウサギにかつがれる。ナイジェリアのジュクン人の民話では、ウサギは王の召使いとして人々との仲介者となったり、未知の作物や鍛冶(かじ)の技術を人々にもたらす文化英雄の役割を演じるほか、詐術によって世の中を混乱させたり、王の人間としての正体を暴いてみせたりする。またいたずら者のウサギは「相棒ラビット」などのアフリカ系アメリカ人の民話にも生き続けている。
[ 執筆者:天野 武・渡辺公三 ]

コアラ(こあら)
[ 日本大百科全書(小学館) ]
koala

[学名:Phascolarctos cinereus]

哺乳(ほにゅう)綱有袋目クスクス科の動物。コモリグマ、フクログマ、キノボリフクログマともいう。オーストラリア南東部に分布する。頭胴長60~80センチメートル、体重4~15キログラム、尾はほとんどない。鼻鏡は大きく裸出する。前足、後ろ足ともに5本の指がある。前足の第1、第2指はほかの指に対向し、枝を握るのに適している。後ろ足の第1指は短くて太くつめを欠き、ほかの指に対向し、第2、第3指は結合する。雌の腹部には育児嚢(のう)があり、後方に開口し、内部に2個の乳頭がある。体毛は羊毛状で密生し、上面は暗灰色、下面は灰白色である。盲腸は哺乳類中もっとも長く、体長の約3倍で2.4メートルもある。

樹上生で、ユーカリの森林地にのみ生息する。夜行性で、昼間は木の叉(また)などで休息し、夜その葉を食べる。コアラが食指を動かすのは、600種ほどあるユーカリ類のうち、わずか35種ほどである。単独で生活することが多く、性質はおとなしく、動作も緩慢である。妊娠期間約35日で、普通1頭の子を産む。子は未熟な状態で産まれ、頭胴長1.7~1.9センチメートル、体重1グラム以下、毛は生えていない。育児嚢内で数か月育てられ、その後約半年は雌親に背負われている。離乳時に、雌親の肛門(こうもん)に口をつけて、なかば消化したユーカリの葉の特殊な軟便を離乳食として食べる。寿命は15~20年。1985年現在、オーストラリア以外では、アメリカのサン・ディエゴ動物園、ロサンゼルス動物園と日本の東京都多摩動物公園、名古屋市東山動植物園、鹿児島市平川動物公園で飼育されている。日本へきたのは1984年(昭和59)10月である。毛皮のために乱獲されて数が減ったので、現在は保護されている。

[ 執筆者:中里竜二 ]

ライオン(らいおん) [ 日本大百科全書(小学館) ]
lion

[学名:Panthera leo]

哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物。かつては熱帯降雨林とサハラ砂漠を除くアフリカ全域、アラビア半島、ギリシア、小アジア、インドまで広く分布したが、紀元前100年ごろにギリシアで滅んでからは各地で減少し、19世紀にはケープ、ナタール、アルジェリアで絶滅し、20世紀前半にはイラク、イラン、モロッコなどから姿を消した。現在ではアフリカの内陸部と、わずかにインド西部のガー森林に残るだけである。草原や乾いた半砂漠地帯にすみ、アフリカではアカシアの木が散在するサバンナの川沿いの土地に多く、インドでは落葉樹のチークにアカシアなどがまばらに生えている林に生息する。

[ 執筆者:今泉忠明 ]

1. 形態
トラとともにネコ類のなかで最大で、雄は体長1.6~2.4メートル、尾長75~100センチメートル、体重150~260キログラムに達するが、雌はずっと小形である。頭骨などはトラに似るが、体つきはトラに比べて胴が短く四肢が長く、腹が締まり、跳ぶことよりも走るのに適する。外観はトラとまったく異なり、幼獣は暗褐色ないし黒色の斑点(はんてん)があるが、普通、生後半年を過ぎるとほとんど消失する。尾の先端には暗褐色の房毛がある。雄は1歳半ごろから特有のたてがみを備え始め、ほかに肘(ひじ)やかかと、胸から腹にも長毛が発達する。耳は先が丸く、耳介の裏面は基部が黒く白斑がある。体色、たてがみの長さや色、腹面の長毛の分布、体の大きさなどは地方によって違いがみられ、いくつかの亜種に分けられている。
[ 執筆者:今泉忠明 ]

2. 亜種と分布
最大の亜種はケープライオンP. l. melanochaitusで、正確な記録はないが、体長2.4メートル、尾長90センチメートルほどもあったといわれる。体は黄褐色、たてがみは純黒色で長く肩よりも後方に達し、腹面にも黒い長毛がある。ケープとナタールに分布したが、1858年から65年の間に絶滅した。この亜種と並び大形といわれるのがバーバリライオンP. l. leoで、体は暗黄褐色、たてがみは黒毛が多く長く肩を越え、胸から腹にも黒茶色の長毛がある。北アフリカのバーバリ地方からエジプトまで分布したが、1922年ごろに絶滅した。現生する最大のものは、南アフリカのトランスバールライオンP. l. krugeriと、セネガルからナイジェリアに分布するセネガルライオンP. l. senegalensisで、体長2メートル前後、尾長95センチメートル前後に達する。たてがみはそれほど長くなく、体下面の長毛もない。中形のものは、アフリカ東部のマサイライオンP. l. massaicus、ウガンダライオンP. l. nyanzaeと、アフリカ南部のカタンガライオンP. l. bleyenberghi、カラハリライオンP. l. vernayiで、体長1.9メートル前後、尾長90センチメートル前後である。アジアに分布する唯一の亜種インドライオンP. l. goojratensisも中形で、体長1.95メートル、尾長83センチメートルぐらいである。外形はバーバリライオンに似ている。個体数は200頭ほどで、絶滅が心配され、厳重に保護されている。小形のものは、アフリカ北東部に分布するソマリライオンP. l. somaliensisとアビシニアライオンP. l. rooseveltiで、体長1.8メートル、尾長80センチメートルほどである。ソマリライオンはたてがみが貧弱で肩には達さず、しばしばたてがみのない雄がみられる。アビシニアライオンはたてがみは短いが、腹面に黒い長毛があり、バーバリライオンに似ている。
[ 執筆者:今泉忠明 ]

3. 生態
普通は群れで生活する。群れは、平均すると2頭の雄の成獣、6頭の雌の成獣、1頭の雌の亜成獣、2頭の1歳以上の子、5頭の1歳未満の子からなり、プライドprideとよばれる。ほかに若い雄だけの群れも知られる。プライドはほぼ一定の行動圏をもち、広さは食物量とプライドの大きさによって異なるが、40~500平方キロメートルである。狩りは普通、夕方から夜間に行われるが、日中もしばしばみられる。プライドの雌たちが協力して獲物を倒すことが多いが、雄が協力することも、自力でとらえることも知られる。また、ヒョウ、チーター、ハイエナなどの獲物を横取りすることもある。獲物はヌー、シマウマ、トムソンガゼル、イボイノシシで、アフリカゾウの子やスイギュウ、サイなどをも襲う。走る速さは時速48~60キロメートルに達するが、追跡距離は100~200メートルである。なお、一跳びで幅12メートル、高さ3.6メートルを超えるという。1頭のライオンは1年間に体重120キログラムの獲物を20頭ほど食べ、一度に22~27キログラムの食物をとる。

繁殖期は一般に不定で、子は一年中みられる。妊娠期間は100~116日、1産2~4子である。雌親は乾期であれば川辺の茂みなどで、雨期なら小高い岩陰などで出産する。子は体長20センチメートル前後、尾長10センチメートル前後、体重1.2~1.5キログラムほどで、目はほとんど閉じている。目は2~3週間で完全に開き、8~10週間乳を飲む。3週間ほどで歩けるようになり、4~5週間で動くものを追ったりじゃれたりし、5~7週間で雌親のあとをついて歩くようになる。2歳ほどで独立し、3~4歳で性成熟する。飼育下での寿命は25年である。
[ 執筆者:今泉忠明 ]

4. 人間との関係
かつてはアフリカからインドにかけて広く分布したライオンも、文明の発達による草食獣と生息地の減少で各地から姿を消し、植民地時代には狩猟が加わって分布域はさらに狭まった。その間にしばしば「人食いライオン」が出現している。なかでも、1898年に東アフリカのウガンダ鉄道の工事キャンプを襲った2頭のたてがみのない雄ライオンの話は、「ツァボの人食いライオン」として有名である。このライオンは、工事に従事していたインド人28人と数十人の原地人を食い殺したのである。9か月余りして2頭のライオンは射殺され、標本としてシカゴのフィールド博物館に陳列されている。野生のライオンは減少しつつあるが、世界各地の動物園などでは繁殖率が高く、増加を抑えるのに苦慮している。また、日本でもペットとして家庭で飼育されることがあるが、地方自治体では事故防止などのために「動物の保護および管理に関する条例」(いわゆるペット条例)を設けつつある。
[ 執筆者:今泉忠明 ]

5. 民俗
百獣の王とよばれるライオンは、力の象徴として、しばしば王、王権、さらにはカトリック教会における神、聖人(聖マルコは有翼のライオンによって表される)などと結び付けられてきた。南部アフリカ、ショナ人の首長は、死後ライオンに姿を変えるとされる。また、実際に王がライオンを手なずけて飼っていたという事例も、古代エジプト、ラムセス2世(在位前1304~前1237ころ)の例や、アッシリアのアッシュール・バニパル王(在位前668~前627)の宮殿で行われたライオン狩りのレリーフ彫刻などにみられる。ライオンは、人間界における力の保持者と対比されるだけでなく、ライオンの具現する破壊力をもしのぎ、それを統御する者を際だたせる象徴でもある。克服すべき(克服された)力の象徴としてのライオンは、前記アッシリアの彫刻(ライオンが飼育檻(おり)から放たれて殺されるという、王主催の儀礼を描く)にも、また、ギリシア神話のヘラクレスの12の功業の一つ、ネメアのライオン退治の物語にも表れている。ケニアのマサイ人において、男子が成人の一人前の戦士と認められるためには、ライオンと戦い倒さねばならないとされていたことも同様の例である。いずれにしても、ライオンを倒した者は、その強い力を自らのものとすると考えられているのであろう。

支配する力と破壊する力の両義性をもつ力の象徴としてのライオンは、ヒンドゥーの神話にも表れる。太陽の光の神格化とされるビシュヌは、魔神ヒラニヤカシプを、人身獅子(しし)頭の姿に変身して倒した。しかし、その後も狂暴な力を振るい続けたため、自らもライオンに似た怪獣に化身したシバ神によって倒されたとされている。恩恵をもたらすと同時に破壊力をもつ太陽との関係は、古代エジプトの太陽神ラーとライオンの結び付きにもみられ、太陽の通路の地下トンネルへの入口と出口はライオンによって守護されているとされていた。門、境界の守護者としてのライオンは、ミケーネの獅子門、ヒッタイトの首都ハットゥシャ(ボアズキョイ)の獅子門、さらには、ヨーロッパ、ロマネスク教会の入口に施された悪者を倒すライオンの像にもみられる。アフリカ各地に、ライオン人間(あるいは獣人間)の秘密結社が存在していたとされ、ときには、王や首長の権力の乱用をチェックするために力を行使する一方、残忍な方法で人を殺害し食人をも行う悪人の結社として、恐怖の対象ともなった。ここにも、ライオンのイメージの両義性をみることができよう。
[ 執筆者:渡辺公三 ]
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