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パンダ(ぱんだ)
[ 日本大百科全書(小学館) ]
giant panda

[学名:Ailuropoda melanoleuca]

哺乳(ほにゅう)綱食肉目クマ科の動物。この動物の分類については1世紀以上にわたってアライグマ科、クマ科、パンダ科などの論議がなされてきたが、1996年以降のDNA研究の結果から、早期に分岐したクマ科の動物とみなされている。普通、パンダの名でよばれるが、ほかにジャイアントパンダ、オオパンダの名もあり、中国では大熊猫(ターシェンマオ)と称する。近似種にはレッサーパンダAilurus fulgensがある。パンダは中国四川(しせん/スーチョワン)省の中部・北部、甘粛(かんしゅく/カンスー)省の南端、東経102~104.4度、北緯28~33.25度の範囲に分布。海抜1000~3000メートル、ときに4000メートルの高山地帯で、竹林の密生する所に生息する。本種が動物学上に登場したのは、1869年、フランスの神父ダビッドPre Armand David(1826―1900)によってヨーロッパに紹介されたのが初めてである。

1. 形態
外部形態は、クマに似て頑丈な体格をなし、頭は丸く、胴は太く短く、四肢は太く筋肉質である。成獣は、頭胴長1.2~1.5メートル、尾長10~15センチメートル、体重は80~150キログラム。前肢の手の親指の外側には、指状の突起がある。この突起は可動性に富み、タケに登ったり、タケの枝をつかんだりするのに適し、俗に6本目の指とよばれる。体毛は、黒色と白色のツートンカラーで、目の周り、手と前後肢および前肢から肩の上、頸(くび)の背面までは黒色、ほかの部分は白色である。この体毛から、イロワケグマ(色分け熊)ともよばれたことがある。内部形態は、植物性の食性にもかかわらず、肉食性の形態を残し、胃は単胃で小さく、腸管の長さもわずかに体長の4倍ほどにすぎない。ただ、歯は植物食に適合して、臼歯(きゅうし)は扁平(へんぺい)で幅広く咬合(こうごう)面が大きい。

2. 生態
密生した竹林帯に単独で生活し、おもにタケの葉、タケノコなどを食べる。飼育例では、タケの葉のみならず、直径5センチメートルほどのタケの茎をかみ裂き、表皮をはぎ取り、茎肉を好食したことがある。野生のものでは、魚、小動物を食べたという記録もあり、ロンドン動物園ではニワトリのもも肉、上海(シャンハイ)動物園ではウシの肋骨(ろっこつ)を炭火で焼いたものを与えていた例がある。行動は朝と薄暮に活発で、日中と夜間は休息していることが多い。発情期は春で、雌雄ともににおいづけ行動が活発になり、特有の鳴き声を発して、配偶関係を結ぶ。妊娠期間はおよそ150日で、秋に1~2子を産む。新生子はわずかに体重100グラム前後で、感覚機能、運動機能ともに未熟である。約6か月間哺乳し、1年間ほど雌親と行動をともにするが、親離れ以後は単独生活に入る。

飼育下での繁殖はむずかしく、中国の北京(ペキン)動物園、上海動物園以外では、メキシコのチャプルテペック動物園、スペインのマドリード動物園、アメリカのワシントン国立動物公園および日本の上野動物園などに例がある。上野動物園の場合は、1979年(昭和54)にランラン(蘭蘭、雌)、カンカン(康康、雄)のペアが自然交配に成功し妊娠したが、出産直前にランランが死亡。その後ホアンホアン(歓歓、雌)とフェイフェイ(飛飛、雄)のペアの間で人工授精が試みられ、85年6月に第1子チュチュ(初々、雄)を出産したが2日後に死亡、ついで86年に実施した人工授精で6月に第2子が生まれて無事に成長し、トントン(童童、雌)と命名、さらに88年6月には第3子ユウユウ(悠悠、雄)が同じく人工授精によって誕生した。その後、ユウユウは92年(平成4)11月に北京動物園のリンリン(陵陵、雄)と交換され、リンリンとトントンとの繁殖が期待されたが、トントンが2000年7月に死亡し、東京第2世の実現は果たせなかった。また、フェイフェイが1994年12月、ホアンホアンが97年9月に死亡し、リンリン1頭になってしまった。リンリンは、2001年以降チャプルテペック動物園との繁殖計画に参加し、繁殖期の春を同地で過ごしているが、2003年現在ではまだ繁殖に至っていない。

3. パンダ保護
パンダは、中国では第一級保護動物として厳重な保護下にある。パンダの調査と保護活動が国際的規模で行われるようになったのは、1974年から76年にかけて主要な餌(えさ)であるタケが枯死し100頭を超える野生パンダが餓死するという事態が起こり、80年に中国政府がWWF(世界野生生物基金。現世界自然保護基金)と協力して調査と保護対策を講ずるようになってからである。90年代に行われた大規模な生息数調査によってほぼ1000頭という数字と生息環境の悪化が明らかになり、野生状態での保護と飼育下における増殖の両面作戦が必要とされた。とくに野生での保護は保護区の拡大・新設とともに各保護区を結ぶ「緑の回廊」(コリドー)の設置が開始され(2000)、飼育下では繁殖施設の増設と中国動物園協会と国際自然保護連合(IUCN)の野生生物保全繁殖専門家グループ(CBSG)が協力して増殖と基礎研究にあたることになった(1998)。しかし、これらの努力にもかかわらず、2001年2月15日のWWFの発表によれば、野生のパンダの生息数はほぼ1000頭と改善されておらず、その理由は生息山林の減少と生息地の分断にあるとされ、今後の積極的な対策が求められている。

飼育下繁殖は近親交配を防止する血統登録の実施や人工授精技術の向上などによって改善され、成都(せいと/チョントゥー)や臥龍(がりゅう/ウーロン)にある繁殖センターおよび北京、成都、重慶(じゅうけい/チョンチン)、上海などの動物園で毎年十数頭の繁殖がみられるようになっている。パンダの繁殖活動は中国国外でも行われており、日本では、前述の上野動物園とチャプルテペック動物園の共同繁殖計画(2001~)のほか、中国のジャイアントパンダ増殖計画に協力し共同研究をする目的で、和歌山県のアドベンチャーワールドおよび神戸市立王子動物園は中国からパンダを受け入れている。アドベンチャーワールドでは、中国で人工授精を受けてきた雌のメイメイ(梅梅)が2000年9月6日に雌のラウヒン(良浜)を出産し、引き続いて前述の増殖計画により1994年に来園した雄のエイメイ(永明)との間にも2001年12月17日に第2子(ユウヒン(雄浜)、雄)、2003年9月8日に雄の双子の第3子、第4子(リュウヒン(隆浜)、シュウヒン(秋浜))を出産している。また、アメリカのサン・ディエゴ動物園でも1999年8月に1頭が出産している。いずれにせよ、野生の保護と飼育下繁殖は車の両輪であり、その並行的進展が重要である。

[ 執筆者:中川志郎 ]
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ゾウ(ぞう) [ 日本大百科全書(小学館) ]
【象】

elephant

哺乳(ほにゅう)綱長鼻目ゾウ科に属する動物の総称。この科Elephantidaeの現存する仲間には2属2種がある。

[ 執筆者:齋藤 勝 ]

1. 分類
アフリカゾウ属LoxodontaのアフリカゾウL. africanusは、サハラ砂漠以南のアフリカ全域に分布しているが、その分布域は狭められてきている。アフリカゾウL. a. africanus、マルミミゾウL. a. cyclotisの2亜種が知られ、体長6~7.5メートル、体高3.5メートル、体重6.5トンに達する。これまでに知られる最大の個体は、1955年にアンゴラで捕獲されたもので、体高4メートル、体重10トンとされている。牙(きば)は雄で3.58メートルのものも知られている。亜種のうち、アフリカゾウはサバンナややぶ地にすむが、マルミミゾウは森林地帯に分布し、前者に比べて体は若干小さい。このほかアフリカ大陸には、ピグミーゾウといわれるさらに小形のゾウの記録がみられるが、個体変異と考えられている。

アジアゾウ属ElephasのアジアゾウE. maximusは、インド、スリランカ、インドシナ半島、マレーシア、インドネシア、中国南部に分布し、4亜種が知られている。体はアフリカゾウに比べてやや小形で、体長5~6.4メートル、体高2.5~3メートル、体重4~5トンほどである。亜種のうちセイロンゾウE. m. maximusはスリランカに分布する。雄の牙は最大2.1メートル、52キログラムの記録があるが、長い牙を有する個体は全体の10%であるのが特徴で、大陸に産するアジアゾウより体は小さい。インドゾウE. m. bengalensisはネパール、アッサム、ベンガル北部、南インドに分布する。雄の多くが牙を有し、最大で3.17メートルのものが知られている。一般にアジアゾウ全体をインドゾウとよぶ場合が多いが、これは正確ではなく、分類学上はこの亜種のみをさす。スマトラゾウE. m. sumatranaはスマトラ島に分布する亜種で、ほとんどの雄が長い牙を有する。マレーゾウE. m. hirustusはマレー半島に分布し、雄は長い牙を有し、他の亜種に比べて皮膚が肉色を呈しており、黒く長い体毛が生えている。
[ 執筆者:齋藤 勝 ]

2. 形態
ゾウは陸上に生息する動物のうち、もっとも大きなものである。その大きな体を支えるための四肢は太く、それぞれの足には5指があり、それらの指は共通の肉塊の中に収まって、指を包む肉塊全体がクッションの役割を果たしている。体の表面には太い毛が全体に粗雑に生え、尾の先端には房状の長い毛が生える。特徴といえる鼻は、上唇とともに長く伸びて2メートルにも達し、4~5万ほどの筋肉からなっていて、人間の手と同様の働きをする。餌(えさ)を口に運ぶばかりでなく、飲み水も鼻の中に吸い上げて口に入れるが、その量は1回に5.7リットルにも及ぶ。耳は大きく、とくにアフリカゾウが顕著で、放熱器官の役割を果たす。歯式は上顎(じょうがく)の門歯は無根で終生伸び続け、牙いわゆる象牙(ぞうげ)になる。臼歯(きゅうし)は上下1対ずつ生えており、新しい歯が後方から古い歯を押し出す形で生え換わり、幼時に3回、成獣で3回、計6回の生え換わりがみられる。

消化器系は反芻(はんすう)動物に比べて単純な構造で、胃は単一である。あるアジアゾウの成獣の計測値では、小腸20メートル、盲腸1.1メートル、大腸9.4メートル、肝臓の重量は45.5キログラムである。肺は37キログラムほどあり、胸膜腔(きょうまくこう)はみられない。心臓は14.8キログラムであるが、アフリカゾウでは25キログラムほどである。

脳はアジアゾウ、アフリカゾウともに5~6キログラムほどで頭部は大きく、頭を支える頸(くび)は短い。脳を守る頭骨は蜂(はち)の巣状の構造をしており、重量の軽減がなされている。
[ 執筆者:齋藤 勝 ]

3. 生態
森林やサバンナに雌とその子からなる群れで生活し、大きな群れではその数が60頭にもなることが知られている。雄は雌の群れの周囲で生活し、年をとった雄は単独で生活することがある。群れは早朝と夕刻に採食しながら移動するが、その速度は普通時速4~6キロメートルほどである。しかし、危険を感じたり攻撃をしかけるときには、時速40キロメートルほどの速さで走ることができる。日中は水浴を好むが、水浴後アブやサシバエなどから身を守るために体に土を吹きかける。

餌は木の葉、枝、草、竹、果実などで、1日に成獣で300キログラムが必要とされる。水は1日70~90リットルが必要で、乾期には水を求めて移動し、干上がった川底から足を用いて水を掘り当てる術をもつ。

アジアゾウ、アフリカゾウともに妊娠期間は20~22か月で、普通1産1子であるが、まれに双子の例が知られている。動物園での出産例では、アフリカゾウの新生子は体高90センチメートル、体重113キログラム、出産後15~60分で起立することができる。アジアゾウの子もほぼ同じ大きさで生まれる。生まれた子ゾウの哺乳は、鼻を使わず直接口から吸引する。子は3~4歳まで雌親とともに過ごし、雌の場合9~12歳で繁殖が可能になり、健康な雌では一生の間に6頭ほどの出産がみられる。寿命はアフリカゾウ、アジアゾウともに60~70年である。

雄のゾウとくにアジアゾウでは、目と耳の間に位置する側頭腺(せん)からタール状の分泌物を分泌するマストという時期がみられる。数時間から数か月間続くこの時期の雄ゾウは、非常に攻撃的になるため、使役に利用するゾウではこの兆しが消失するまで係留する。マストの状態は雌やアフリカゾウにもみられるが、詳しくはわかっていない。

アフリカゾウとアジアゾウの雑種は、野生の状態では考えられないが、飼育下ではごくまれにみられる。1978年にイギリスのチェスター動物園で、雄のアフリカゾウと雌のアジアゾウの間で雄の雑種が出産したが、生後10日ほどで死亡している。
[ 執筆者:齋藤 勝 ]

4. 進化
現存するゾウは2属2種であるが、4000万年前にさかのぼることのできるゾウの進化史上には多数のゾウが現れるため、その進化の過程を知ることができる。分類学的には海牛とハイラックスはゾウに近縁の動物と考えられている。

これまでに知られているゾウの化石のうちもっとも古いものに、北アフリカの新生代第三紀漸新世の地層からみられるメリテリウムがある。体高70センチメートル、体長3メートルのこの動物は、ゾウとはほど遠い体形をしているが、上顎の門歯が犬歯より長く、ゾウの祖先であることをうかがわせる。これよりゾウに近い動物として、同じ北アフリカに同時期に生息していたと考えられるパレオマストドンは、体高1~2メートルで鼻はメリテリウムより長く、上・下顎の門歯は牙状になっており、中新世以後に現れるマストドンゾウの系列につながるものとして知られている。マストドンゾウは体高2~3メートルで多くの種が知られているが、200万年前から1万年前にかけて地球上から姿を消している。中新世後期にステゴロフォドンが出現した。ゴンフォテリウム(いわゆる長顎マストドンゾウ)とステゴドンの中間型の臼歯をもつステゴロフォドンは、体も大形で鼻も長く、現存する2種のゾウやマンモスゾウはこれから枝分れしたと考えられている。

日本からは、鮮新世から中期更新世にかけていくつかのゾウが知られている。それらは、ボンビフロンスゾウ、エレファントイデスゾウ、アケボノゾウ、アカシゾウ、トウヨウゾウ、ムカシマンモスなどである。また、よく知られているナウマンゾウは、100万年ほど前に東南アジアから移動してきたもので、現存するアフリカゾウの系統とされているが、体高は2.5~3メートルほどでアフリカゾウより小形である。
[ 執筆者:齋藤 勝 ]

5. 利用と飼育
人間は古くから陸上最大の動物であるゾウを利用してきた。これは、大脳の発達がよいゾウを訓練により意のままに動かし、その強大な力を利用できることに起因すると考えられる。アジアでは紀元前2500~前1500年、モヘンジョ・ダーロの出土品のなかに、アジアゾウを使用していたと考えられるものがみいだされており、アレクサンドロス大王の時代にもアジアゾウを戦象として使用したことが知られている。

アフリカゾウについては、北アフリカに分布し現在は絶滅した小形のものを、古くカルタゴ人が利用したことがよく知られている。なかでも、前254年にカルタゴ軍のハスドルバルが140頭ものアフリカゾウをシチリア島の首都パレルモを陥れるために使い、同じカルタゴの将軍ハンニバルは前218年に37頭のゾウを引き連れてピレネー山脈を越えたことなどがよく知られる。アフリカゾウの利用はその後例をみず、1909年になって旧ベルギー領コンゴ(のちザイール、現コンゴ民主共和国)に国立のゾウ訓練所が設置されたが、アジアゾウの使用ほどには至らなかった。一方、アジアではその後もゾウは家畜として扱われ、自動車の発達に伴って利用価値が減ってはいるが、林業などに重要な働きをしている。

日本へのゾウの渡来は、1408年(応永15)にアジアゾウが1頭若狭国(わかさのくに)(福井県)にもたらされたのが最初とされ、その後も何頭かのアジアゾウの記録がある。動物園での飼育は、1888年(明治21)に東京の上野動物園にもたらされた2頭のアジアゾウが最初である。

アフリカゾウの渡来はそれよりはるかに遅く、1953年(昭和28)に1頭が巡回動物園で飼育されたのが最初で、動物園で飼育されたのは1965年に石川県の金沢動物園(いしかわ動物園の前身)の1頭が最初である。1975年以後、サファリ形式の動物園が各地に開園し、かなりのアフリカゾウが飼育されるようになった。
[ 執筆者:齋藤 勝 ]

6. 現状と保護
アフリカゾウは、1979年には推定130万頭がアフリカ大陸に生存していたが、国際自然保護連合(IUCN)のアフリカゾウ専門家は、1998年時点で30万1000頭から48万7000頭と推定した。一方、アジアゾウはIUCNによって14か国に3万4594頭から5万0998頭が生息しているとされた(2000年調査)。いずれのゾウも、生息地の縮小と象牙のための密猟でその生息数は減少していると考えられている。1976年より、両種ともにワシントン条約による保護の対象動物である。
[ 執筆者:齋藤 勝 ]

7. ゾウと人間
インドやミャンマーでは、ゾウはチーク材など重い物の運搬に欠くことのできない家畜として用いられており、ゾウの調教師というのはインドではマハウト、ミャンマーではコジイとよばれて一種の専門職になっている。かつては、戦車にかわる乗り物としても広く利用されていた。宗教的な説話にもよく登場し、なかでも摩耶夫人(まやぶにん)(釈迦(しゃか)の母)が、天から降りたった1頭の白ゾウが自分の体内に入る夢をみると、しばらくして釈迦が誕生したという話は有名である。神聖な動物と考えられている白ゾウは、サマンタバダラ(普賢菩薩(ふげんぼさつ))の乗り物としても知られ、タイやミャンマーでは王位の象徴となっている。

アフリカでは、18世紀のダオメー王国で女性戦士の戦車としてゾウが用いられたことが知られているが、家畜として用いられることはほとんどなく、もっぱら象牙を目的とした狩猟の対象であった。とくに東アフリカ産の象牙はインド産のものに比べて大きく、しかも軟らかいため細工に適し、9世紀ごろからは本場であるインドへも輸出されていたという。19世紀に象牙の需要が急増すると、東アフリカ内陸部には、ゾウ狩りを専門とする部族も現れた。これらの首長国の多くではゾウは首長位と結び付き、領内で狩られたゾウの牙(きば)2本のうち1本は首長に権利があるとされていた。このようにゾウが尊重されたのは、動物の王としてばかりでなく象牙交易をめぐる経済的利権も関係していた。

[ 執筆者:濱本 満 ]

ホッキョクグマ(ほっきょくぐま)
[ 日本大百科全書(小学館) ]

【北極熊】

polar bear

[学名:Thalarctos maritimus]

哺乳(ほにゅう)綱食肉目クマ科の動物。北極圏、グリーンランド、アイスランドの海岸沿いに生息する。ときに流氷にのって遠くまでくることがあり、日本でも北海道の根室(ねむろ)まできたことがあるという。頭胴長2.4メートル、体重750キログラムに達する。他のクマに比べて頸(くび)が長く、頭が比較的小さく、体が長い。足はとくに大きい。毛はクリーム色を帯びる白なのでシロクマともよばれる。幼獣ではより白くきれいであるが、しだいに黄みを帯びてくる。交尾期以外は単独で生活し、泳ぎ、潜水がうまい。サケ、タラなどの魚類、アザラシなどを好んで食べる。冬ごもりはしないが、雌は雪の中に穴を掘り、1~2子を産む。エスキモーが毛皮をとるために狩猟する。

なお、ヒグマ、ツキノワグマにもアルビノ(白化型)が出るので、シロクマという名を用いることはそれらとの混乱を招くので好ましくない。

[ 執筆者:渡辺弘之 ]

シマウマ(しまうま)
[ 日本大百科全書(小学館) ]

【縞馬】

zebra

哺乳(ほにゅう)綱奇蹄(きてい)目ウマ科のシマウマ亜属とグレビーシマウマ亜属に含まれる動物の総称。英名をゼブラという。アフリカ大陸のサバンナと山地の草原にすむ。現存するウマ科動物のうちで、もっとも原始的なグループである。歯式はで、合計40~42本、ウマやロバと同じである。染色体数は、ノウマが66本、ロバが54~62本であるが、シマウマは32~46本である。

1. 形態
全身に明瞭(めいりょう)な縞模様がある。これは毛のみでなく、皮膚にも濃淡の縞模様があるもので、種類により縞の太さ、腹部下面や四肢の縞の有無に相違がある。頸(くび)の背面中央にあるたてがみは立っていて、倒れることはない。尾の毛は、先端の部分だけが長い。体のわりに頭部が大きいこと、前肢内側に小判形の無毛部(たこ、または夜目(よめ)という)があるが後肢にはないことなどの特徴は、ロバと共通であるが、家畜のウマとは異なる。体高は1.1~1.6メートル。

2. 生態
数十頭から、ときには数千頭の大群で、レイヨウ(アンテロープ)類など他の草食獣といっしょにすむ。大きな群れは、雄のリーダーに率いられた十数頭の家族集団の複合体と考えられている。主食は草で、レイヨウ類が食べられないほど堅い茎の草も食べる。天敵はライオンとヒョウであるが、人間による乱獲のため、各所で数が減少している。サバンナシマウマ以外のシマウマは、すべて絶滅のおそれが大きい。飼育下における繁殖期はとくに決まっていないが、野生のサバンナシマウマは、10月から3月にかけて出産することが多い。発情は、出産の数日後にみられるので、2年連続して出産することも多い。妊娠期間は370~390日で、1産1子。子はすぐに起立し、歩行することができる。子の模様は明瞭であるが、黒色部は赤褐色を帯びる。哺乳は起立したまま行うが、横向きに寝た母親の乳を吸うことが動物園で観察されている。長寿記録としては、サバンナシマウマに31年6か月という例がある。

3. 種類
シマウマ亜属Hippotigrisには3種が含まれる。ヤマシマウマEquus zebraは、もっとも南に分布するシマウマで、絶滅の心配される種である。南アフリカ共和国のケープ地方にいるケープヤマシマウマE. z. zebraと、アンゴラからナミビアにかけて分布するハートマンヤマシマウマE. z. hartmannaeの2亜種がある。本種は、頸の下側中央部の皮膚が垂れ下がっていることと、腰の部分の縞模様とによってサバンナシマウマとは明らかに異なる。四肢は先端まで縞がある。体高1.2~1.36メートルで、亜種を比較すると、ケープヤマシマウマのほうが小形で生息数も少ない。

クアッガE. quaggaは、アフリカ南部に分布していたが、19世紀に絶滅した。体高1.38メートルと大形であった。サバンナシマウマと同一種であるとする学者もいる。

サバンナシマウマE. burchelliiは、アフリカの東部から、南部の中央部にかけての草原に分布する。野生での数も多く、飼育されているシマウマの大部分は本種である。産地により次の4亜種(6亜種の説もある)に分けられる。

(1)バーチェルシマウマE. b. burchellii ボツワナ南部から南アフリカ共和国中央の北部にかけて分布していたが、20世紀初頭に絶滅した。腹部下面と四肢は白色で縞はなかった。体高1.35メートル。

(2)チャップマンシマウマE. b. antiquorum ジンバブエ、ボツワナ、ナミビアと南アフリカ共和国の北東部に分布する。縞と縞の間に淡色の縞がある。体高1.3~1.45メートル。南方のものをダマラシマウマとして別亜種にすることがある。

(3)セロウスシマウマE. b. selousi(E. b. crawshayi) モザンビーク、ザンビア、マラウイの南部に分布する。縞の数は多く、四肢の蹄部まである。体高1.25メートル。

(4)グラントシマウマE. b. bohmi タンザニア、ケニア、スーダン、エチオピア、ウガンダに分布する。ザンビアに分布するものを別の亜種にする説もある。腹部にも縞がある。体高1.1~1.2メートル。シマウマで数がもっとも多いのはこの亜種である。

グレビーシマウマ亜属Dolichohippusには、グレビーシマウマE. grevyi1種が属する。エリトリア、エチオピア、ソマリア、ケニア北部に分布する。体高1.6メートルにもなる最大のシマウマである。生息数は少ない。

4. 日本での飼育
シマウマが初めて渡来したのは17世紀であるが、上野動物園で飼育されたのはキリンよりも遅く、1931年(昭和6)のことである。ハートマンヤマシマウマは、1973年(昭和48)に初めて渡来し、1975年には神奈川県川崎市の夢見ヶ崎動物公園で繁殖に成功した。その後、サバンナシマウマ、ヤマシマウマ、グレビーシマウマの3種とも国内で飼育され、繁殖している。

[ 執筆者:祖谷勝紀 ]

ゴリラ(ごりら)
[ 日本大百科全書(小学館) ]

[学名:Gorilla gorilla]

哺乳(ほにゅう)綱霊長目ショウジョウ科の動物。オオショウジョウ(大猩々)ともよばれる。チンパンジーと同じチンパンジー属Panに含める立場もある。2種のチンパンジーとともにアフリカ大形類人猿African great apesを構成する。2亜種があり、テイチゴリラ(lowland gorilla)G. g. gorillaは、カメルーン、コンゴ、ガボン、赤道ギニアなどの低地多雨林に分布するのに対し、マウンテンゴリラ(mountain gorilla)G. g. beringeiは、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部、ウガンダ南西部、ルワンダ北部の山地林に生息する。

1. 形態
現生霊長目中の最大種で、雄は体重200キログラム以上に達し、とくにマウンテンゴリラは大きい。性差が著しく、雌の体重は雄の約2分の1である。雄の身長は2メートルを超す。大人の雄の背から腹にかけては銀白色になり、シルバーバックとよばれる。また、頭頂の矢状稜(しじょうりょう)とよばれる骨の突起に沿って高い隆起が発達する。それらの特徴もマウンテンゴリラのほうに著しい。体色は、マウンテンゴリラは漆黒、テイチゴリラは暗褐色である。耳殻は小さい。鼻は低く、鼻翼が発達し、鼻孔は大きい。歯の数は32本でヒトと同じであるが、雄の犬歯は強大で、歯隙(しげき)が目だつ。頭蓋(とうがい)内容量は雄が500cc以上、雌は約450ccであり、小形類人猿であるテナガザルの100ccに比し格段の開きがある。ゴリラの雄の脳と体重の比は1対420、ヒトのそれは1対47である。

2. 生態
雌は8歳で性的成熟に達するが、雄では9歳で、このころから背中の毛が白くなり始め、完全なシルバーバックになるのは11~13歳といわれている。初産年齢は10歳、妊娠期間は255日で、1産1子、出産間隔は約4年である。樹上、地上両様の生活様式をもつが、より地上性に傾いている。地上依存の傾向は、体重との関係もあって年齢とともに顕著になり、とくに大人の雄はめったに樹上にベッドをつくることはない。偏食の傾向が強く、野生のセロリなど草本の葉や茎、タケノコ、木生シダの葉柄など繊維の多い食物を主食とする。昆虫や動物を食べたという記録はない。マウンテンゴリラは海抜2000~4000メートルの湿潤な山地林または亜高山帯の草本に、テイチゴリラは低地多雨林の林縁や二次林の水分を多く含んだ草本類に依存して生活している。

集団は2頭から40頭余までの記録があるが、平均は11頭で、単雄複雌の構成を基本とする。集団は20~40平方キロメートルの遊動域をもち、近隣の集団の遊動域とは大幅な重複をみせるが、集団間の社会関係はきわめて厳しい。このような集団のほかに単独行動をする雄がいる。集団は凝集性が高く、チンパンジーのような離合集散性は認められない。単独行動をする雄は、集団内の初産の新生子を抱いている若い雌に目をつけ、その新生子を殺す。雌は加害者である雄を追って生まれ育った出自集団を離れ、最初の2頭からなる単位集団が誕生する。この現象を観察したフォッシーDian Fosseyは、雄による雌の誘拐(キッドナッピング)とよんだ。雄はさらに誘拐を重ね、集団内の繁殖をも加えて集団のサイズを大きくしてゆく。このようにして雄の晩年には集団サイズは20頭以上にも達する。このような集団には、2~4頭のシルバーバックが認められることがあるが、そのなかの1頭が家父長的な雄で、あとはその息子である。しかし、その家父長的な雄の死とともに、雌たちは近隣の集団に吸収され、あるいは単独行動をする雄に奪われて、集団は崩壊する。このようにゴリラの社会は、雄1代限りで継承されることのない集団と、単独行動をする雄からなっている。アフリカの類人猿3種の社会は、いずれも雌が集団間を移籍するという点は、母系的なオナガザル類の社会とは対照的な構造だといわなければならない。

ゴリラは通常はもの静かな動物であるが、緊張すると両手で胸をたたき(ドラミング)、遠距離まで届く音をたてる。また雄の外敵への威嚇の声は爆発的な激しさをもつ。シャラーGeorge Schallerは22種の音声を記録している。両亜種とも絶滅が心配され、厳重に保護されている。ルワンダのカリソケKarisokeでは長期観察が続けられている。

[ 執筆者:伊谷純一郎 ]
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㈱ボンネット田中
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